素敵なマイホームを紹介します。家づくりのきっかけから現在の住み心地、成功した点や失敗だった点など、参考にしましょう!
住宅外観
リビング、中庭、デッキスペースが一つの空間になっている
屋上から中庭を見る
▼訪れる人を包み込む住まい―人とのかかわりを生活の中で体験
沖縄市・当真さん宅
体育会系家族の住まいは いつもにぎやか
沖縄市に住む当真さん宅は、たくさんの人の集まる住まいだ。共に高校の体育教諭、体育系部活動の顧問をする夫妻の住まいには、両方の教え子たちが訪れ、試合後の打ち上げをする場所となっている。
「私の父親も姉弟も含めて体育会系家族です。実は完成してまだ5カ月のわが家なんです。新築祝いをしたときには、家族や友人など総勢百三十人が一堂に集まりました。普段から何かあるとき、何もないときでも週末の夕方などには自然と人が集まります」。
当真さんの住まいは、1階が貸店舗、2、3階が居住スペースになっている。1階から階段アプローチを上がると正面に玄関ドアがあるのだが、何となく横に広がる芝生の庭から声をかけて中に入りたい、そういうつくりの住まいだ。
当真さん宅は夫婦と子供3人が暮らす住まい。住まいづくりに要望したことは、人の集まれるスペースとして、ダイニングキッチンからリビング、中庭をL字型に結び、ひと続きにすることだった。
「小さい頃から実家には、いつもたくさんの人が集まって、食事をしたり、酒を飲んだり。私の父親も教員をしていましたから、家族や友人だけでなく、その教え子も。だから家に人が集まることはごくあたり前のこと。しかし、実家ではせっかく集まってもスペースが限られていて、二つの部屋に分かれて座っていたりしていました。だから、私が家をつくるときには、みんなが一つの場所にいられるような場所をつくりたいと思ったんです。この家が完成してからは、実家に来ていた人たちもそのままここに来るようになりました。より、来やすくなった感じです」。
人と人とのかかわりを生活の中で体験
「よく大きい家と言われるけど、部屋は四つしかないんですよ」と笑う当真さん。リビングに置かれた長さ4メートル50センチのどっしりとした一枚板のテーブルを見ながら、「うちにはみんなが集まるためのものしかない」とさらに笑う。L字型に結ばれたダイニングキッチンから中庭は、その場の雰囲気などによって、さまざまな使い方ができる。
「大人たちがリビングで酒を飲んでいると、庭では子供たちが水掛け遊びをしたり、ボール投げをしたり。時には、どちらかが舞台のような役割をしたりね。居住スペースが2階にあるから、外を気にしなくてもいい。のびのびと過ごせるんです。大人の目が届くところで子供が自由に遊べる。どちらも安心していられる」。
こうした大勢の人が集まる住まいの利点として当真さんが上げたものは、「人と人とのかかわりを生活の中で自然に体験することで、社会に出ても人とのかかわりを大切にする人間としてしっかり育っていけるのでは」ということ。
「家族とのふれ合い、人とのかかわりを通して何がいちばん大事なのか、ということが子供たちにもわかってくるのではないか。少なくとも、私たちはそうやって育ってきたと思うんですよ。ここに集まる子供たちを見ていると、同じ兄弟・姉妹だけでなく、大人たちに連れられてきた子供たちまで一緒になって遊びますから、その中からリーダー役をする子が出てきてみんなをまとめたり、弱いものをかばったり、しつけたりする。そういうことが自然と生まれるんですね。こういうことは教科書で教えることはできないです」。
教員という仕事柄、多くの家族に接することが多いと話す当真さん夫妻。しかし、最近では寂しい家族関係を目の当たりにすることも多くなったと話してくれた。
新築祝いから始まり誕生日パーティー、試合の慰労会、集まる人々それぞれの祝い事など、さまざまなことがある度に、ここには人が集まる。
「何も用はないけど、ただ来てみた、という人もいますよ。友人の友人という人もね。初対面の人が来ても何の違和感もないみたい。そうやって、だんだん人の和が広がっていくことがうれしいです。いつも、どういう人が来ても包まれる方ではなく、包み込む方にまわりたいと思っています。自分がベースになってもいい。だから誰が来てもOK」。
そういう温かい雰囲気が漂う家だからこそ、多くの人が訪れたくなる住まいなのだろう。
住まいの向かい側にあるビジュル。向こう側に見える赤瓦屋根が当真さん宅
リビングから中庭を見る。森の緑が借景に
住まいづくりのきっかけ
以前はアパート住まいだった当真さん夫妻。子供の成長とともに、手狭になりはじめたことで本格的に家づくりを考え始めた。今年7月に完成したばかりの住まいの向かい側には、“ビジュル”と呼ばれる霊石を祀った小さな森がある。祈りのためにそこを訪れる人も多い。人々の祈りが、この住まいによって遮られることのないよう、海の方向へと“気”が抜けていくように設計段階から配慮した。中庭に向かって大きく開放されたリビングからは、その森の緑が眺められ、空間全体が森の緑と一体となった印象だ。
「もともとこの辺の出身なんです。母も祖母も。母が17年前に亡くなってから、祖母がずっと私たち姉弟の母親代わりをしてくれた。祖母は90歳近くになりますが、最近は体調を悪くして入院しています。もしもの場合のことも考えていなければいけない年です。その時にはここから送り出したいと思っています。だから、この場所にこだわって家をつくりました」。
ビジュルの前では、毎年旧盆の頃になると地域の青年団がエイサーを披露する。そんな風景を楽しめるのもこの住まいならではのことなのだ。
子供部屋の与え方 〜当真さんの考え方〜
当真さん夫妻には、3人の男の子がいる。「厳しいですよ。彼等にとっては“コワイお父さん”らしいです」と笑う当真さん。住まいには、まだ小さな男の子たちの今後を考えて、子供部屋のスペースも確保されている。
「3階に子供部屋のスペースを確保してありますが、今のことろは仕切らずオープンなスペースになっています。小学校や中学校になって、それぞれで個室が必要だと思ったとき、家具やインテリアで仕切ればいいという考えです。子供部屋は必要だと思います。でも、子供は成長し、いずれは独立していく。そう考えると、自由自在に使える部屋の方がいいでしょ。一人ひとりに個室を与えるのがステイタスのように考える人もいるでしょうが、私は、必要最小限のスペースを与えるだけでいいと思う。家具やインテリアで子供の好きにさせます。自分以外の誰かと過ごしていることで、迷惑をかけちゃいけないとか、何か物足りなさを感じさせるとか。少しはハングリーなところも持ちながら育ってほしいから」。
個室にこもるようにさせるのではなく、リビングやダイニングで家族と触れ合い、人とのかかわりやルールやマナーを身につけてほしいと話す。「そういうふうにやっていくと、家族のあり方も変わってくるのでは―?」と話した。
リビング
屋上にはオープンシャワースペースがある。景色を眺めながらのシャワーは子供たちも大喜び
当真さんの父は彫刻家。アトリエを設けた
壁面は作品展示スペースに
住まいに“癒される”を実感
「家が完成したことで、自分自身が変わりました。心にゆとりが生まれたんでしょう。住まいに癒される、そういう感覚を実感しているところです。また、人として一つのステップを上がれたような気がしています。これからも楽しみはいっぱいです。一生懸命家を守って、来た人をもてなして、子供には『うちのお父さんは恐いけど、楽しいよ』って言われる家をつくっていきたいですね」と話してくれた。
人の温かさが伝わってくる住まいには、今週も週末になると友人たちが集まり、自然とにぎやかな時が流れる。そうした中で、人と人との結びつきや社会のルールやマナーを自然と身につけて育っていく子供たち。そんな住まいの風景を小さな森がそっと見守り続ける。
設計:建築研究室 匠斎庵
(仲村渠 常広)
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